ネットで知り合った友人と起業してから2ヶ月半のふり返り

インターネットを通じて知り合った友人と起業した。ダンmikkameで「株式会社ダンミカ」
2021年9月14日にぼくからmikkameさんに声をかけた。そこからの2ヶ月半をふり返ってみる。

起業の動機と、エンジニア人生

「特にやりたいことはないけど、文系だし、営業をやることになるんだろうな」
大学時代、就活に差し掛かったころのぼくはそう考えていた。
就活系の何かの説明会で「営業にもいろんな種類がある」という話を聞いたので、「どんな営業なら楽しめそうかな」と考えるようになった。
当時のぼくの頭でいろいろ考えた結果、「自分が良いと思えるサービスを自分で作って、それを求めている人に届ける」のが1番楽しそうだという結論に至った。売るところだけを担当するより、企画や開発から携わった方が、売るときにも心からおすすめできるし、やりがいを見出せそうな気がした。
まずは自分がほしいサービスを作れるようになるために、試しにプログラミングを始めてみたところ、それがなかなか性に合っていて、結局エンジニアとしてキャリアをスタートすることになった。
最初はつらいことも多かったけれど、プログラミングを始めてから4年が経ち、今はようやくある程度信頼されるようになってきた。もう駆け出しのころのように、ジャマ者扱いされることもない。
そうしてエンジニア人生が安定し始めたのと同時に、「自分が技術者として大成することはないだろう」と考えるようにもなった。
ぼくは世の中の優秀なエンジニアと比べて、明らかに技術への興味が薄い。便利なライブラリを見つけた時はすごくテンションが上がる一方、そのライブラリの内部構造にはあまり興味が持てない。いつまでも技術の表面をなぞって使っている感覚が拭えないし、もうそれでいいやと考えている自分がいる。
技術者としてのキャリアに行き詰まりを感じ、今後の方向性を模索する中で、プログラミングを始めるきっかけであった「自分が良いと思えるサービスを自分で作って、それを求めている人に届ける」という方向に改めてフォーカスしようと思うようになった。

共同創業者さがし

これまで個人でいくつかのサービスをリリースしてきたけれど、今回は最初から複数人でやると決めていた。
前述のように、ぼくは技術への関心が薄いし、単純に技術力もあまり高くない。
一方で、エンジニアの仕事のうちプログラミング以外の部分は、エンジニアが苦手意識を感じがちなところも含めて、それなりに楽しめるタイプだ。
UXを考えたり、いろんな立場の関係者とコミュニケーションをとったり、文章を書いたり、データをとって分析したり、採用の方針を考えたりもろもろの仕事は、むしろコードを書くこと以上に価値を出せている気がする。
だから、ぼくよりも技術力の高いエンジニアと組んで、ぼくはコードを書く以外の部分に徹するのがベストなやり方だと思っていた。
そんな折、インターネットで知り合ったmikkameさんというエンジニアの友人とリアルで会う機会があった。
2年くらい前に運営者ギルドというコミュニティで知り合い、今はNoraneersエンジニアと人生コミュニティと計3つのコミュニティで交流がある。
もともとネット上での振る舞いから、あまり言葉を選ばずに話すので一見コワく見えるけど、行動をよくみると思いやりがあって、人として信用できる印象があった。
実際に会って話してみると会話がはずみ、ネットで交流していたとき以上に良い印象を受けた。
mikkameさんのエンジニアとしてのタイプは、ぼくと真逆に近い。技術に関してはフルスタックに深く広いスキルがある一方、交渉とか見せ方を考えるとか、そういう動きは苦手そう。
スペシャリストタイプで、得意なことと苦手なことがはっきりしている。できることの幅は広いけどこれといった強みがないぼくにとって、お互いに能力を補完し合えそうなところもプラスに感じた。
作りたいサービスの方向性が固まったタイミングでmikkameさんに声をかけ、一緒にやっていくことに決まった。
家は遠いし、数回しか会ったことないし、一緒に仕事をしたこともない。
よく言われる「共同創業者にはこういう人を選ぶべき」みたいな条件を全て満たしていたわけではないけれど、「mikkameさんとやってうまくいかないなら、それはもうしょうがないな」と思えたから踏みきった。
今ふり返っても、この時のぼくの判断は抜群だったと思う。そして、これといった実績のないぼくの誘いに乗ってくれたmikkameさんには感謝しかない。

やろうとしたことと、どう進んだか

ぼくたちはweb会議や議事録まわりのサービスを作ろうとした。
コロナの影響もあってweb会議はあたり前になったけど、まだまだストレスや改善できるところがたくさんあると、日々働きながら感じていた。
議題や資料や議事録のひな形を共有するのが面倒だし、議事録を書く人のために話すスピードを調整するのは非効率だし、それらが面倒なことが原因で会議のログが一切残らないことがある。
ざっくりと、このあたりの課題を解決したいと思った。
まずは大枠の構想をmikkameさんに伝えた。
そして、エンジニアと人生コミュニティのメンバーを中心に20人くらいに、1人ずつ時間をもらいインタビューをして、web会議周りの課題や、web会議をどういう風に使っているか、声を集めていった。
集まった声を元に話し合い、プロトタイプの仕様を決めた。この時点では、ぼくら2人の温度感はほぼ一致していたように思う。
プロトタイプを作り、今度はそれを持って再度インタビュー!と思ったのだけど、このあたりからmikkameさんがあまり乗り気じゃなさそうというか、今のアイデアに可能性を感じてなさそうな言動が増えてきた。
プロトタイプの仕様のうち、ぼくとmikkameさんで特に魅力を感じているポイントがズレていたり、近い領域のサービスのクオリティが高かったり、その他もろもろ複数の要因が合わさって、少しずつ今のアイデアでは難しいと感じるようになっていったようだ。
ぼく自身はまだ可能性を感じていたので、「難しいかどうかは、インタビューの結果を受けて考えましょう」という方向で押し切って、プロトタイプを持って2人だけインタビューさせてもらうことになった。
でもそこでの反応もあまり良くなくて、結局これまでのアイデアは白紙に戻して、また0から考え直すことになった。

根本的な問題点

今回うまく噛み合わなかったのは、たんにアイデアの質が云々ではなく、もっと根本的な部分に問題があったからだと思っている。
当初の想定では、
1. インタビューを元にアイデアを考えてプロトタイプを作る2. プロトタイプを持って再度インタビューして、更なるインサイトを得る3. 新たなプロトタイプを作る
というサイクルを高速で回して、「これなら行けそうだ」と思えたタイミングでMVPを作ってリリースするという進み方を考えていた。
でも実際にやってみると、1→2に進むのにすごく時間がかかってしまった。
お互いに別で本業があり、このプロジェクトに関しては無給でスタートしている状況では、自分がときめかないアイデアだと、プロトタイプを作ってインタビューに進むことにさえ待ったをかけたくなってしまう。
それに、なんとなく稼働量の約束はしていたものの、給与が発生していない状況では、そんなものほとんど意味をなさない。
ワクワクしていればどれだけ忙しくても寝る間遊ぶ間を惜しんで動くし、逆もまた然りだ。
少なくとも今の自分たちでは、同じ進め方をしている限り、また0からアイデアを考え直したとしても同じ壁にぶつかってしまうように感じた。
うまくいくより先に仲違いする可能性も高い。
そもそも今回やろうとしていた進め方も、起業の本に書いてあったやり方をほぼ鵜呑みにしただけだった。
mikkameさんの異常な開発スピードとか、リモート&少ない資金&サイドプロジェクトで始めたこととか、2人の性格や強み弱みを考えると、もっと良い進め方がある可能性だって十分に考えられる。
またプロダクトに対する評価などについて、mikkameさんとぼくである程度同じような感性持ってると思っていたけれど、いざプロダクトを作るとなると良いと感じるポイントはけっこう違った。
感じ方のズレが生まれるたび、ぼくの考えを最大限言語化しようとがんばったけど、今振り返ると「最初からこの言い方していれば伝わったのにな」と思うポイントも多々ある。
お互い他で稼ぎがあってバーンレートが低い状態なら、サービスの成長という意味での成果を急ぐより、もう少し気持ちに余裕をもって、理解を深めながら自分たちにあったやり方を探っていくのもアリかもしれない。

これから

0から再スタートするにあたり、まずは何より「手を動かすエンジニア自身が腹落ちしているサービスを作ること」を重視しようと思った。
話し合いを進める中で、mikkameさんの中には温めていたアイデアが山ほどあることを知り、その中にはぼくが魅力を感じるものもたくさんあったので、まずはそのうちいくつかを形にできればと思っている。
「仮説検証をくり返して失敗の確率をへらすこと」「規模や収益性を追求すること」よりもまずは「2人で協力してリリースまで持っていくこと」「お互いの強みや弱み、やる気が出るポイントに対する解像度を上げること」に重きをおいて、身近な人の生活をちょっと良くするようなサービスを作っていきたい。
その中で、作ったサービスの拡散のしかた、上手な外注のしかた、データ分析など多くのサービスに共通して役立つスキルを磨くこともできるし、
もし収益が上がってくれば、それぞれ徐々に今の本業をへらして、ぼくらのサービス開発へのコミット量を増やしていくことだってできるはず。
焦らず着実にサービスを作りながら、自分たちにあったやり方を探していきたい。
来年の今頃には、もっと良い報告ができますように。